自己肯定感と
カウンセリング
自分を信じる。相手も信じる。
自分を信じる「自己肯定感」が低いと、自分のみならず他者も信じにくくなります。
まずは自分を信じ、守ること。そして余裕ができれば、人にも優しくなれやすいです。
カウンセリングを通じ、そのための方法論を、探していけると幸いです。
もくじ
- はじめにー自分を信じられないー
- 自己肯定感が下がったときのデメリット
- 対策1:自分で自分を支える、守る
- 対策2:自分で自分を傷つけない、縛らない
- 対策3:他者を受け入れる「余裕」を作る
- 「自己肯定」イコール「傲慢」ではない
- 自己肯定感の改善に、カウンセリングでできること
- まとめ
はじめにー自分を信じられないー
「自己肯定感」を持てないとの悩みがあります。
ここ最近、「自己肯定感」に関して、本などで話題になる事もあるせいか、ご相談が多くなっています。ビジネス書等で、パフォーマンスを発揮する方法としての「自己肯定感」が言われる一方、それがなかなか持てず葛藤したり、後悔が続く方もいらっしゃいます。
ここで強調したいのは、「自己肯定感」は、今からでも身につけていけるものということ。過去を悔やむより、性格を呪うより、「社会で負けずに生きる」スキルとして、行えることは多くあります。
自己肯定感が下がったときのデメリット
自分を生かしにくいほか、他者にも厳しくなることもあります。
では、「自分を信じられる感覚」いわば自己肯定感が下がると、どのようなデメリットがあるでしょうか。いかに例を挙げますが、自分自身への影響のほか、他者への関係にも強い影響が出る事があります。
①本来の力を発揮できない
人のちからは有限です。だからこそ、いかにそれを発揮できるかが、生活・仕事などにおいて重要になります。
ここで、自己肯定感が下がっていると、「できないのではないか」との否定的な考えが出てきて、それが自分に暗示をかけてしまいます。その結果、暗示にしばられ、本来の力を発揮できない状態になってしまいます。すると結果がついてこず、さらに自己肯定感が下がる悪循環になります。
②成長のためのチャレンジがやりにくくなる
成長のためにはチャレンジが必要ですが、チャレンジには、リスクや批判がつきものです。自己肯定感が低くなると、リスクや批判に圧倒されてしまい、なかなかチャレンジの一歩が踏み出せなくなります。すると成長がうまくいかず、さらに自己肯定感が下がることがあります。
③相手にコントロールされやすい
自己肯定感が下がると、自分の行動・判断・感覚に自信が持てなくなり、それを他者にゆだねてしまいやすくなります。その他者がいい人だといいのですが、悪意があったり支配的な相手の場合、相手にコントロールされたり、いいように使われてしまう恐れがあります。
④人にきつく当たり、人が離れていくリスク
自己肯定感が下がると、自分に厳しく接してしまいがちですが、そうすると余裕がなくなり、他者にもきつく当たってしまうことがあります。そうすると、多くの場合相手が離れていき、さらにそれで自己肯定感が下がってしまうことがあります。
総じて、自己肯定感が下がると「自分を生かしにくくなり」「他者ともうまくやりにくい」悪循環におちいる恐れがあります。
この特徴から、疲れ切ってしまうなど、様々な生活での困りごとが発生してきます。
対策1:自分で自分を支える、守る
自分を一番近くで守れるのは、やはり自分自身です。
誰かに傷つけられているとして、誰があなたを守ってくれるでしょう?誰かが運よく守ってくれる場合もありますが、もしその人に悪意があれば、また同じ繰り返しになってしまいます。また、そうした人がいない場面も、少なくありません。
そこを踏まえると、最終的には、自分を守るのは「自分自身」ということになります。たとえ周りに傷つけられても、自分でそれを癒し、また立ち上がっていく。これができると、自己肯定感が戻るのみでなく、他者に依存することを防ぐことにもつながります。
では、そのためにどうするか?具体的な例をいくつか挙げます。
●自分の「軸」を定める
たとえ傷つけられても、こころからやり遂げたいことはどんなことか?その「軸」がしっかり定まれば、中傷・嫉妬などを受けても「自己肯定感を下げる」ことを、だいぶ防ぎやすくなるでしょう。もしすぐ見つからなければ、以前を振り返ったり、色々試したりして、探していくといいでしょう。
●プラスの自己暗示
自分の「こころの声」には、良くも悪くも影響を受けます。どうせ影響を受けるなら、プラスの言葉に影響を受けた方が合理的です。
自分を奮い立たせる言葉をいくつか準備しておき、特に嫌なことがあったときになどに思い出し、自分に言い聞かせるのが一つの方法です。
●相手を見極める
相手の助言や指導は、本来は「こちらの改善のため」のはずですが、時にイライラをぶつけるだけだったり、悪意が潜んでいたりします。それは毒と同じで、真っ向から受けるとダメージを受けてしまいます。
助言や注意する相手がいた場合、その相手が「信じていい相手か」見極めることが重要です。そのうえで、悪意や否定的感情などは受け流して、本当に自分を思った助言はしっかり聞くことが対策になると思われます。
●必要な時は主張する
すぐ怒ることはあまりよくありませんが、特に自分の「軸」や大事なことを傷つけられたときは、しっかり主張することが、自己肯定感を守るためには重要です。ただし、主張することにリスクが伴うのも事実なので、しっかり見極めたうえで行うことが大事です。
現実的にリスクが上回る場合は、そこでは直接は主張せず、しかしその怒りは否定せず認め、自分を奮い立たせる動力源にするのも一つのやり方です。
対策2:自分で自分を傷つけない、縛らない
自分で自分を傷つけても、自分含め誰も得をしません。
自己肯定感が下がると、「どうせやっても無駄」など、否定的な考え(心の声)が出てきて、それに影響されて悪循環になる事があります。似たものに「こうしないといけない(べき思考)」「完全にやらないといけない(完全主義)」などがあります。
また、こうしたルールに従うことが「がんばった」ことになると、本来悪循環でも「がんばった結果仕方ない」となってしまい、そこから抜けにくくなってしまうことがあります。
対策は、基本的には一つ「合理的にやること」と考えます。
プラスのことには影響を受けるといいのですが(暗示も含め)、マイナスのことには影響を受けないほうがいいのです。無視したり、聞き流した方がいいのです。
これらの「自分を傷つけ・縛る考えのくせ」は、認知療法では「自動思考」もしくは「スキーマ」と呼ばれるもので、自然に出てきてしまうものです。一方、それを聞くかどうかは、自分自身にかかってます。方針はある意味明確、「マイナスになる事は聞かない」それにつきます。
「わかっていても聞いてしまう」との話を聞きます。くせになっているので当然です。だからこそ、「聞かない、受け流す」練習を、意識的に、できるまで繰り返していくのです。
そしてかわりに、自分の「軸」ややりたいことへの考えを意識的に(自分で)聞いて、プラスの影響を自分に与えていけるといいでしょう。
対策3:他者を受け入れる「余裕」を作る
自分を信じられれば、他者を思う余裕が出てきます。
自己肯定感の目標は、「自分も大事に、相手も大事に(I'm OK,and you are OK,too)」の状態を作っていくことです。
そのためには、「他者」を受け入れる余裕を作ることが大事です。ではどうするか?これは、対策1,2で自分を信じ、余裕を持つことができれば、多くの場合大丈夫と考えます。
自分に「傲慢さ」があると、「自分は大事に、でも他者は大事にしない(相手を見下す)」ことになりかねませんが、これまで自己肯定感で葛藤された方であれば、その辛さがわかるので、傲慢になる事は少ないのではないかと思います。「余裕を持てない」ことが他者へのきつさの原因であれば、「余裕を持つこと」で解決します。
「自己肯定」イコール「傲慢」ではない
これまで自分に悩んだ方は、どうか自分を信じてください。
こうした自己肯定感の話をすると、「じゃあ傲慢なやつの勝ちじゃないか」「もとから自己肯定感の高い人には勝てない」などの意見を聞きます。
この意見には、2つの点で反論します。
まず、この「自己肯定」は、他者との競争ではなく、自分自身との戦い、本来の自分の能力を発揮し、他のひとにも還元するための戦いです。
もうひとつは、「自分を責める」ことは、自己肯定感を下げやすい弱点がある一方、「いたずらに他者を責めない」長所でもあります。短所の部分さえカバーできれば、本来の長所が生きて、「自分も他者もOK」の状態に持っていけるでしょう。
(もとから自己肯定感が高い場合、いかに他者への「リスペクト」をしっかり持てるかが、バランス的に重要になるでしょう)
自己肯定感に、カウンセリングでできること
対話を土台に、技法もあわせ自己肯定感の獲得を目指します。
自己肯定感の問題は、やるべき方向は分かっても、実際に取り組みを始めて、継続していくには難しい面も時にあります。その際、以下のような観点から、カウンセリングを通じて、お手伝いできる部分もあるかと思われます。
①「尊重されつつ話を聞いてもらえる」場所の提供
自己肯定感が下がっているとき、特に悪循環にあると、「話を聞いてもらえない」と感じ、さらに話さずため込んで自己肯定感が下がる場合があります。
カウンセリングでは、心理士がお話を聞くことを通じて、「尊重されつつ話を聞いてもらえる」場所を提供します。
このちょっとした「成功体験」の積み重ねを通じて、自己肯定感回復の土台を作っていくことを目指しています。
②「自分の特性」を知る援助
自分だけで考えると、客観的に見て「自己肯定感がどうなのか」見えにくい面もあります。他者である心理士と対話しながら振り返ることを通じ、自分の自己肯定感の状態が客観的にどうか、意見を聞き、理解の助けとすることができます。
③考えや行動の「くせ」の修正
自己肯定感が下がると、自分を否定する「自動思考」などのくせが出やすくなり、それに影響されて悪循環にはまる場合があります。カウンセリングでは、「認知再構成」などの認知行動療法の技法を用いながら、この考えのくせの理解と修正を繰り返し試みていきます。
④「自分の軸」を探す
自己肯定感が下がると、自分の価値観に自信が持てなくなり、「軸」を見失うことが多くあります。そして、自己肯定感を高め、自分で自分を守るために、この「軸」の再発見は非常に重要です。カウンセリングでは、自己肯定感を徐々に回復させていく中で、この軸の再発見の模索を図ります。
⑥自分の性格の長所を再確認し、生かす
たとえ自己肯定感を持ちにくい性格だったとして、それは劣っていることでは決してありません。自分を守り、生かすことができるようになれば、それは「他者を尊重できる」長所に変わります。カウンセリングを通じて、自分の性格の裏にある長所の再発見を図っていきます。
まとめ
自分を信じられれば、本来の長所も生きてきます。
性格・経験などを背景に自己肯定感が下がり、自分や他者との関係に強く影響することがあります。重要なのは、自分で自分を傷つけず、代わりに自分を守る方法を身に着けること。そうすれば本来の謙虚さなど、長所も生きてくることが期待できます。
なお、当ルームでも、自己肯定感に関してのカウンセリングをお受けしています。また、必要に応じ、治療ができる医療機関と連携しています。もしお悩みがある場合、下のボタンからすぐ予約を取ることができます。お待ちしております。
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監修者:春日 雄一郎(精神科医、臨床心理士、医療法人社団Heart Station 理事長)