HSPと
カウンセリング

敏感さを、マネジメントする。

HSPは生来の「敏感さ」。刺激が増えると、様々な不調が出やすくなります。

 

一方で「気を使える」等の長所も多く、弱点をカバーし長所を生かすのが対策の方向です。

 

カウンセリングを通じ、弱点のカバー法を徐々に身につけるのも、一つの対策です。

もくじ

 
  1. はじめにー敏感さの悩みー
  2. HSPの定義と特徴
  3. 実際の困りごとの例
  4. 心療内科でできること・難しいこと
  5. HSPへ、対策の方向性
  6. HSPに、カウンセリングでできること
  7. まとめ
  8.  

はじめにー敏感さの悩みー

特に最近、「敏感さ」の悩みが増えています。

 

ここ最近、「HSPではないか?」「敏感すぎて疲れてしまう」などのお悩みを聞くことが増えています。特に最近、コロナ禍の関連で、否定的なニュースに反応してしまう、振り回されて疲れてしまうとの話が増えているように思います。

「否定的な情報に振り回されてしまう」ことが、敏感な、HSP傾向のある方の弱点の一つと思われます。一方で、「深く考えられる」「細やかな気づかいができる」など、長所も本来たくさんあります。いかに弱点をカバーし、本来の長所を生かせるか。これがHSPの対策の要点ですし、HSPの方へのカウンセリングでもそこが目標になってきます。

 

ここから先では、HSPの特徴や実際の困りごと、その対策と「カウンセリングでできること」について見ていきます。

HSPの定義と特徴

生まれながらに敏感で、良くも悪くも情報が多く入ります。

 

HSPとは、アーロン博士(心理学者)が定義した概念で、「Highly Sensitive Person」の略です。日本語にすると「(もとから)とても繊細な人」となり、最近では「繊細さん」と呼ばれることもあるようです。定義等にもよりますが、当てはまる人は多く、一説には5人に1人ともいわれています。

 

より具体的には、次の4つの特性があるとされ、英語の頭文字をとって「DOES」と略されます。

①処理(考え)の深さ(Depth of prosessing)

ものごとを深く考える傾向があります。しっかり物事を考えられる一方で、必要ないことまで「考えすぎて」しまい、疲労・ストレスがたまったり、考えに縛られて動けなくなる場合があります。

②刺激の受けやすさ(Overstimulated)

様々な情報を、より敏感に感じ取ります。少ない情報から多くを読み取れる一方で、無意識に様々な情報の刺激を強く受け続けて、休まらず疲れ切ってしまいやすい弱点があります。

③感情的反応性・共感力の強さ(Emotional reactivity and high Empathy)

相手に対して、強く共感し・影響を受ける傾向です。細やかな共感・気づかいができる一方で、相手に気を使いすぎて消耗したり、相手の悪意に強く影響されて自己肯定感が損なわれるリスクがあります。

④ささいな刺激に対する感受性(敏感さ)(Sensitibity to Subtleties)

わずかな音やにおいが気になるなど、日常のささやかな刺激に敏感です。感性豊かに生活や物ごとを味わうことができる一方、刺激が強い場所で疲れ切ったり、残酷な表現などに強いストレスを受けるおそれがあります。

 

まとめると、(考えること・刺激全般・人間関係のすべてにおいて)敏感に情報が入りすぎることといえます。情報を音にたとえれば、他の人の数倍の音量ですべてが聞こえる状態です。ささいな音も聞き取れますが、少し大きい音は爆音になってしまいます。

 

この特徴から、疲れ切ってしまうなど、様々な生活での困りごとが発生してきます。

実際の困りごとの例

疲れ切ったり、周りに影響されすぎることがあります。

 

刺激に敏感すぎるということは、無意識に生活すると「刺激を強く受けすぎる」ことにつながります。その結果、以下のような様々な困りごとが出てくることがあります。

 

●すぐ疲れ切ってしまう

 

例えば外に出れば、色々なものが見えたり音が聞こえたりします。これらの刺激を敏感に「拾って」しまうことで、「強い刺激」が脳にずっと続く結果、すぐ疲れ切ってしまうことが起こります。さらに、家でもいろいろ気になってゆっくりできないと、疲れが取れずさらに疲れ切ってしまいます。

 

●人に気を使いすぎて疲れる

 

敏感なのは、対人関係でも同様です。相手のことを考えすぎたり、相手の様子などの影響を敏感に「拾って」しまうことなどで、人とかかわることでも刺激が強い状態が続き、疲れ切ってしまうことがあります。

 

●他の人に影響されすぎる

 

敏感さや共感性の高さから、他の人に影響されやすい傾向があります。いい影響であればいいのですが、相手に悪意があったときに深く傷つくこと、および相手に一貫性がない時に振り回されて疲弊してしまうことのおそれがあります。

 

●がまんしてストレスがたまる

 

色々と気が付く一方で、感受性や「深く考える」ことから、なかなかそれを言えないことが起こりやすいです。そして「がまん」した結果、ストレスが溜まってしまうことが繰り返されることがあります。

 

●自己肯定感が下がる

 

敏感さ、がまんから疲労・ストレスがたまった状態が続く結果、「わかってもできない」繰り返しから自己肯定感が下がる場合があります。また、否定的発言を「強く」受け取ることで深く傷つき、自己肯定感が損なわれる場合があります。

 

●「うつ」「対人不安」になるおそれ

敏感さから疲労やストレスが続くと、適応障害やうつ病といった「うつ状態」になるおそれがあります。また、対人関係で深く傷つく体験から「対人不安(社会不安)」になるおそれがあります。

心療内科でできること・難しいこと

精神科的診断は可能ですが、いくつか制約・限界もあります。

 

ここ最近、心療内科(メンタルクリニック)で、HSPの相談を受けることが増えているそうです。医療機関でないとできないことがある一方で、難しいこともあるようです。

 

ここで、具体的に、心療内科(メンタルクリニック)でできること、難しいことを見ていきます。

 

<できること>

 

①精神科的な診断の確定

HSPの特徴があっても、実際には他の原因(発達障害や甲状腺の病気など)が隠れていることがあり、その場合はHSPの対策よりも、その原因の治療や対策を取ることが必要になります。そのために、医療機関での診断は有効です。(他の原因がない場合、精神科的には「不安障害」「不安神経症」といった診断になるようです)また、合併しやすい「うつ病」「社会不安障害」などの診断もあわせて受けられます。

 

②取り組みの方向性の助言

精神科的な診断や見立て・合併しているこころの病の診断をもとに、どのような方向で取り組んでいくべきか、および薬を使うかどうかなど、大局的な取り組みの方向性について、医学的な妥当性、専門性が担保された中で助言を受けることができます。

 

③必要な薬での治療

不安を和らげるくすり、合併したうつ状態への薬などを相談しつつ使用し、不安・落ち込みなどの症状の改善を図っていくことができます。

 

<難しいこと>

 

①「HSP」そのものの診断

あくまで医療機関での診断は「精神科的な診断」であり、「HSPかどうか」自体に関しては正式な診断を行うことはできないとされます。

 

②「HSP」そのものへの薬の治療

心療内科では、うつや不安などへの薬の治療は可能ですが、HSP自体(生まれながらの敏感さ)への治療薬は、2021年現在ない状態です。

 

③時間をかけたHSP特性への取り組み

心療内科では、一般的には「診察」「くすりの治療」が柱になり、いわゆる「じっくり時間をかけたカウンセリング」は難しい面があります。

 

特に③(時間をかけたカウンセリング)に関して、民間のカウンセリング施設を活用することは、選択肢の一つです。

HSPへ、対策の方向性

自分の特性を知り、弱点カバーの方法を模索します。

 

では、HSPへの対策の方向性は、どういったことになるでしょうか。大まかに言えば、「自分の特性を知った」うえで、「弱点をカバー」し、「長所を生かす」ことにつきます。具体的には、以下の方向性があります。

 

①「自分の特性」を知る

 

まずは、自分の特性(敏感さなど)と、それでどのように社会生活での困難が出ているかを知ることが重要です。たとえば、「自分の疲れやすさ」は「無意識に強い刺激を受け続けていること」から生じていることや、「振り回されやすい」ことが「共感が強すぎる」ことから生じていることなどを知っていきます。そのうえで対策(弱点のカバー)を考えます。

 

②ストレス・疲労のマネジメント

 

HSPの弱点として、刺激を強く拾いすぎる結果「ストレスや疲労がたまりやすい」ことがあります。その対策として、意識的に「ストレス・疲労をためない」対策を取ることが重要です。方法は、リラックス法や発散方法の模索など様々ありますが、その中で自分に合ったものを探し、方法論を組み立てていきます。

 

③考えや行動の「くせ」の修正

 

HSPにおいて、特性としての「先回りして考えてしまう」「考えすぎて動けない」などの考え・行動のくせが不調の原因になる事があります。また、いやな体験などから二次的に「自分を否定する」「どうせだめだと思って動けない」くせが生じることもあります。

 

これらの自分の「くせ」を知ったうえで、それを修正することで、生きづらさや不調の改善を見込みます。

 

④「自分の軸」を持つ

 

HSPでは、その共感性の強さから「まわりに影響されすぎてしまう」ことがあり、それで疲弊・混乱することがあります。対策として、本来の自分はどうしていきたいか、「自分の軸」をしっかり見つめなおすことが重要になります。軸が定まれば、影響されそうなときに「軸」に立ち返り、ぶれずに行動することがしやすくなります。

 

⑤HSPの長所を再確認し、生かす

 

HSPの「敏感さ・感受性」は、「気づかい」や「洞察力」など、本来は長所になることが多く、「弱点のカバー」ができれば、むしろ「武器」として生かせる部分が大きいです。ただし、二次的に落ち込み、自己肯定感の低下などがあると、本来の「長所」を見失ってしまっていることもあります。弱点と長所は表裏一体です。自分の特性は今の生活でどのように「長所」になるか、再確認して、実生活に生かしていきます。

HSPに、カウンセリングでできること

対話を通じて、弱点カバーの方法論の確立を目指します。

 

HSPへの対策は、方向は比較的明確ですが、やりきるには時間がかかったり、一人ではやり切るのが難しい場合もあります。そうしたときに、カウンセリングを活用するのも選択肢です。具体的には、以下のような形で、対策をお手伝いできることがあるでしょう。

 

①「自由に話して、聞いてもらえる」場所の提供

 

HSPの人では、「気を使ってがまんする」ことでため込んでしまうことがあります。カウンセリングでは、心理士がお話を聞くことを通じて、「自由に話をできて、かつ聞いてもらえる」場所を提供します。

 

この「話して・聞いてもらう」ことの繰り返しを通じて、「自分は思ったことを話しても大丈夫」という自己肯定感の改善が期待されます。また、ため込まず話すことでの「発散効果」も期待できます。さらに、話すことで「気持ちを整理して、もやもやを解消し、解決や受け入れにつなげる」効果も、特に洞察力に長けたHSPの方に有効と思われます。

 

総じて、HSPの方の特性と、カウンセリングの取り組みは、相性が合う部分が多いと思われます。

 

②「自分の特性」を知る援助

 

自分で自分を知ることは、どうしても極端になったり、見えない部分があるなど、難しい面もあります。他者である心理士に話しながら自分の状態を整理することで、より客観的・全体的に、自分の状態を理解していくことを目指します。

 

③ストレス・疲労への対処法の模索

 

敏感さのカバーとして、ストレス・疲労への対処法の確立は対策の柱です。一方で様々な方法がありますが、どれが自分に合って、どのように様々な方法を組み合わせるか、一人で取り組むのは難しい場合もあります。カウンセリングでは、心理士と相談することで、共同してストレス・疲労対策の方法論を模索していきます。

 

④考えや行動の「くせ」の修正

 

もとからの特性として、もしくは二次的な産物として、うまくいかない考え方や行動のくせが生じていることがあります。カウンセリングでは、必要時に「認知再構成」や「行動活性化」などの認知行動療法の技法を用いながら、これらのくせの理解と修正を図っていきます。

 

⑤「自分の軸」を探す

 

強い感受性は長所である一方、他者に振り回されて疲弊するリスクもあります。その対策として「自分の軸」を見つけることがありますが、一人では見つかりにくい場合もあります。カウンセリングでは、話して、整理していくことを通じて、共同してあなたの「軸」は何か、徐々に模索していきます。

 

⑥HSPの長所を再確認し、生かす

 

HSPの特性は、弱点さえカバーできれば本来は長所にもなります。ただし、特に自己肯定感が下がった場合など、それを見失ってしまうこともあります。カウンセリングでの対話を通じて、特性は弱点だけではなく武器にもなること、および今の生活や今後の目標のなかでどのように生かすかを模索します。

まとめ

敏感さは生かせば長所に。そのための弱点カバー法習得を目指します。

 

HSPは生まれながらの様々なことへの敏感さ、ともすると刺激が強すぎて疲弊するなど、うまくいかないことが出てきます。一方で、弱点をうまくカバーすれば、その感受性はむしろ多くの場面で長所になります。そのためのカバー法を、多くの方がみにつけていただければ幸いです。

 

なお、当ルームでも、HSPの方のカウンセリングをお受けしています。また、必要に応じ、治療ができる医療機関と連携しています。もしお悩みがある場合、下のボタンからすぐ予約を取ることができます。お待ちしております。

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監修者:春日 雄一郎(精神科医、臨床心理士、医療法人社団Heart Station 理事長)