不登校と
カウンセリング

苦手を、見立てて、整理する。

不登校は、原因はさまざまで、その人によって、とるべき対策が違ってきます。

 

まずはしっかり見立てを行い、そのうえで、話し合いを通じ、徐々に対策を行っていきます。

 

あせると逆効果になる事も多く、じっくりと、しかし着実に対策していきましょう。

もくじ

 

はじめにーあせらず着実にー

焦りは禁物。時間はかけて、しかし着実に対策を。

 

不登校の方のご相談を、特にご家族の方から受けることがあります。「何とか早く学校に行かせたいが、どうしても行かない」など。「学校に行けない・行きたくない」ご本人と、「学校は行かないといけない」との周囲の声との板挟みになる事が多いようです。

その結果「早く行かせなければ」と焦りが生まれるが、ご本人は行けず、今度は家族間でうまくいかなくなり、悪循環になるご相談が少なくありません。

不登校には特効薬はありませんが、大原則は一つあります。それは「焦らない」こと。まずは互いに落ち着き、冷静に生活をすること。そこを土台として、徐々に対策を行っていくことが望まれます。

 

対策としてくすりの治療もありますが、特にストレスが大きい時は効果に限界があり、ご本人の様々な角度からの「こころの整理」が重要になります。その時に、時間をかけたカウンセリングが、有効になる事があります。

 

ここから先では、不登校の要因や対策、どのような相談の枠組みや方法があるかを見ていきます。

不登校の3つの主な要因

主には学校への「適応障害」ですが、発達・精神の不調が時に隠れています。

 

不登校の原因は、人によりそれぞれ違いますが、大まかにいうと。次の3つに分けられます。

 

①学校への「適応障害」

 

一番多いのが、学校に関しての「ストレス反応(適応障害)」です。特に、「家では元気に過ごせる」場合は、その可能性が高いです。

 

まとめると「学校へのストレス」なのですが、その中で、以下のような、様々な要因が考えられます。

 

時に、「特に原因はないが、学校に行く前に不調になる」方もいらっしゃいますが、多くは、よくお聞きしていると、しばしば意識していないストレスが隠れています。

 

この場合は、ストレスを減らす「環境調整」と、必要時の「ストレス対処法の獲得」が主な対策になります。

 

②隠れた「発達障害・知的障害」

表面上は「適応障害」でも、よく調べていくと、背景に「発達障害(ASD/ADHD)」や「知的障害(MR)・学習障害(LD)」が隠れていることがあります。例えば以下のような場合はその可能性を考えることになるでしょう。

 

幼少期に気づかれることが増えていますが、小学・中学になり特徴が目立つ場合、および大きくは目立たないが(特性でのストレスによる)「不登校」の形でまず現れることも少なくありません。この場合は、(通級教室など)必要なサポートを導入することで改善が見込めることがあります。

 

教育センターなどで心理検査は行えますが、最終的な診断は、医療機関の受診・診察が必要になります。

 

③隠れた「こころの病(うつ病・統合失調症など)」

特に、家でも不調が続く場合などは、「うつ病」や「統合失調症」などの「こころの病」が隠れている場合があります。例えば、以下のような場合はその可能性を考えることが望まれます。

 

これらの症状がある場合は、まずは医療機関(心療内科など)を受診し、診断と治療方針をはっきりさせることが必要です。治療でまず症状が落ち着いてから、学校や生活をどうするか、考えていくことになります。

不登校の対策:見立てから対策へ

まず「なぜ不登校になっているか」見立て、その後必要な対策をします。

 

まず、人によりさまざまな「なぜ不登校になっているか」の分析・見立てを行います。その見立てをもとに、その人にとって必要な対策を行っていきます。

 

①不登校の原因の分析・見立て

 

不登校の原因・背景は人によりそれぞれ異なり、対策もその原因等によって変わってきます。そのため、この分析・見立てをしっかり行うことが、対策を取る第一歩になります。具体的に見る代表的な点は、以下の通りです。

 

この見立て(分析結果)をもとに、具体的な対策を計画・実行していきます。

 

②見立てに沿った対策を行っていく

 

①での見立てをもとに、その人にとって必要な対策を行っていきます。主には、以下の6つの中で、必要なことをしていきます。

 

(1)環境調整

 

可能な範囲で、ストレスとなっていると思われる環境面の調整を検討していき、減らせるストレスを減らすことで、症状の改善、状況の打開を図っていきます。その人の状況で様々ですが、以下のような例があります。

 

環境調整は、家ですぐ取り組めるものもありますが、学校と相談して行う必要があるものも少なくありません。実際にはストレスでも調整が難しいこともあり、その場合は、別の対策を重視する必要があります。

 

(2)生活面の対策

 

不登校に加え、引きこもり、生活リズムの逆転などが合併すると、学校に行きにくいばかりでなく、健康面の問題や、うつ病の合併など、二次的な悪循環に至るおそれがあります。そのため、不登校の状態でも、生活面を維持・改善していくことが重要になります。

 

具体的には、学校に行っていれば無意識に行えていた以下のようなことを、できる範囲で自主的に行っていくことが望まれます。

 

なお、不登校の時期によっては、昼夜逆転・ゲーム等の依存になる時期もあり得ますが、その後改善することも少なくないため、悲観しすぎず、できる取り組みから行うことが大事です。

 

(3)こころの整理

 

不登校の背景には、学校との関係などでの悩みや、自分の中での葛藤といった、「こころのしがらみ」があることが少なくありません。

 

これは漠然としていたり、からまっていると、解決が難しいです。対策として、そうしたしがらみを整理していくことが望まれます。あった方法は人により異なりますが、例えば以下のような方法があります。

 

これは、複雑に絡まるほど、時間がかかることが多いですが、取り組みを続けることで、ある段階でふと「答え」が見えることもあるでしょう。

 

(4)ストレス発散法を増やす

 

学校生活も含め、生活にはストレスはつきものです。大事なのはそれを「ため込まないこと」。自分でできる一番の方法は、「ストレスを効率的に発散する」ことです。

 

これは特別な方法である必要はなく、むしろ、日常的なことの方が、日々行いやすい面があります。例えば以下のようなものです。

 

大事なのは、これらの中で「自分に合ったもの」を「なるべく多く」見つける事です。まずはやってみて、振り返ると、合う方法が見えてきます。方法が増えれば、一つがうまくいかなくても別の方法を試すことで打開を図れます。

 

(5)自分の「くせ」を知り調整する

 

例えば「自分で自分を追い詰めてしまう」「嫌なことを嫌と言えず我慢してしまう」など、ストレスがたまりやすい「くせ」がある場合があります。

 

もし振り返ってそうした「くせ」がありそうなら、そこを調整することで、ストレスを減らせる可能性があります。例は以下の通りです。

 

ここで重要なのは、「まず自分のくせを知る」ことです。それだけで多くの場合調整可能です。一部の、それだけでは難しい「根強い」くせに関しては、より専門的な方法を用いることがあります。

 

(6)くすりの治療(医療機関のみ)

 

これまでの対策に加え、医療機関を受診した場合、必要に応じて、以下のようなくすりが、症状などの改善のために使われることがあります。

 

いくつかのアプローチの中で、どの程度「くすりの治療」を行っていくかは、受診の医療機関の先生とご相談ください。

どこで治療・相談するか?

それぞれ一長一短あり。状態・状況等で選びましょう。

 

では、この「見立て」「対策」をどこで行うといいでしょうか?主な相談場所は「医療機関」「スクールカウンセラー」「民間のカウンセリングルーム」の3つになると思われますが、それぞれ一長一短あります。「診断・治療方針」や「診断書での配慮」が重要な場合は医療機関が適切ですし、カウンセリングが重要な場合は、カウンセリングができる場所が妥当になります。

 

具体的に、この3つの場所の特徴・長所・短所を見ていきます。

 

①医療機関(心療内科など)

 

(特徴)

医師の診察を受け、診断を受けつつ治療を行っていきます。必要な薬の処方や、診断書の作成は、医療機関でしか行えません。また、体の原因(甲状腺の不調など)が隠れていないか、検査を受けることができます。

 

ただし、症状の改善を図る「診察」のため、時間をかけた相談(カウンセリング)は困難です。

 

(長所)

 

(短所)

 

②スクールカウンセラー

 

(特徴)

 

多くの学校で学校に「スクールカウンセラー」が勤務しており、必要に応じて、定期的なカウンセリングを受けられる場合があります。費用面・学校との連携など長所が多いですが、学校にいけない場合、相性が合わない場合など、うまくいかない場合もあります。

 

(長所)

 

(短所)

 

③民間のカウンセリングルーム

 

(特徴)

 

自費でカウンセリングを行っているカウンセリングルームです。費用面の問題がある一方で、何らかの理由でスクールカウンセラーとの相談がうまくいかない場合などは、選択肢になる場合があるでしょう。

 

(長所)

 

(短所)

不登校のカウンセリングで行うこと

心理学的な見立てをもとに、必要な介入を行っていきます。

 

では、不登校の方へのカウンセリングでは、どのようなことを行い、どのような効果が見込めるでしょうか。

 

先ほどの「見立て→対策」の流れを、時間をかけて行っていきます。そうした介入に伴う効果のほか、「自由に話せる場」があることでの安心感や、話すことでのストレス発散効果が見込めます。以下に詳しく述べます

 

①不登校の原因などの見立て

 

精神医学的な「診断」はできませんが、カウンセリングを通じて、不登校の背景や、ストレスへの対処状況などの全般的な「見立て」を行うことは可能です。これをもとに、様々な対策を、その後のカウンセリングで行いやすくなります。

 

②環境の振り返りと、調整案の模索

 

カウンセリングを通じて、不登校に至る背景としてのストレスと、環境面の状況に関して見極めていきます。そのうえで、状況を整理して、現実的にどのような環境調整が行えて、ストレス軽減等の効果が期待できるか、相談・模索していきます。

 

③生活面の振り返りと、調整の相談

 

カウンセリングのなかで、日々の生活パターンと、その特徴について振り返っていきます。そして、昼夜逆転など、不具合が続いていた場合は、どのようにすると改善が期待できるか、対策を相談していきます。

 

④こころの整理

 

カウンセリングのなかで、無理のない範囲で、どのようなストレスがあったか、今もあるか、振り返っていきます。カウンセラーが聞く中で自由に話すことを通じ、「こころのしがらみ」を整理していき、次第に解決や受け入れにつなげていきます。

 

⑤ストレス対策の模索と確立

 

「発散法を増やす」ことを含めた、ストレスの対処法に関して振り返りながら、どのようなストレス発散法があるか、相談していきます。その後実際に行った効果を後日のカウンセリングで振り返り、合う方法を見つけ、増やしていきます。

 

⑥自分の「くせ」を知り、調整する

 

カウンセリングを通じ、自分の考え方や対人関係での「くせ」はどうか、振り返りを行っていきます。その中で、「自分を苦しめる」くせの調整を図ります。なかなか調整しにくい「くせ」に対しては、必要に応じて、認知行動療法の技法(認知再構成、アサーションなど)を行っていきます。

 

⑦話すことでのストレス発散・自己表現

 

カウンセリングでは、「相手がきいてくれる」前提のもとで、自由に話を行っていきます。そのことで、ため込んでいたストレスや葛藤の「発散」になるほか、自分のことを人に伝えていく自己表現の練習にもなります。

 

⑧「安心できる場所」の提供

 

カウンセリングは、相手の顔色などを気にせず、安心して自分のことを話せる場所です。この「話す」→「ちゃんと聞いてもらえる」成功体験の積み重ねを通じ、今後にも役立つ「自己肯定感の改善」を目指します。

まとめ

原因はさまざま。しっかり見立てて、必要な対策をじっくり行うのが重要です。

 

不登校は、原因や状況はさまざまです。また、焦ると逆効果のことが多く、腰を据えた取り組みが重要です。まずは状況やご本人の状態を「見立て」そのなかで、必要かつ取り組みやすい部分から、徐々に対策を行っていくことになります。特にストレスが大きく絡む場合は、対策の中で、カウンセリングが、大きな意味を持つ場合は少なくないでしょう。

 

なお、当ルームでも、不登校の方、およびそのご家族のカウンセリングをお受けしています。また、必要に応じ、治療ができる医療機関と連携しています。もしお悩みがある場合、下のボタンからすぐ予約を取ることができます。お待ちしております。

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監修者:春日 雄一郎(精神科医、臨床心理士、医療法人社団Heart Station 理事長)