発達障害
フォローアップ

弱点をカバーし、生活力を高める。

発達障害と診断されたが、その後どうすればいいか、とのご相談が多くあります。

 

特性・弱点をカバーする取り組みが重要ですが、一人では難しいとの声も多く聞きます。

 

カウンセリングで、弱点カバー法、生活力改善のやり方を模索する方法もあります。

もくじ

 

はじめにー発達障害と診断された後にー

診断後、どうすればいいかのご相談があります。

 

ここ最近、「発達障害」の話題がだいぶ一般的になり、多くの医療機関で「大人の発達障害」の診断・治療が行われるようになりました。

一方で、発達障害への特効薬がないことを背景に、「診断は受けたが、その後どうしていいかわからない」との声が生じているようです。

 

ここでは、発達障害につきまとめたあと、診断後の「取り組み」の場と、その中でのカウンセリングでできる事につき紹介します。

 

発達障害の症状・診断・治療

こだわり、不注意などが「生来」続く発達のかたよりです。

「発達障害」とは、生まれながらの「脳の特徴」に伴う、いくつかの特徴が目立つ「持続する障害」です。

代表的には、注意欠陥多動性障害(ADHD)と、自閉症スペクトラム障害(ASD)の2つがあり、しばしばその2つが合併します。また、「あるかないか」の2択ではなく、「程度」での判断となり、特に大人では、中間の「グレーゾーン」になる事も多くあります。

<ADHDの代表的な症状>

①不注意の症状

一つ目は、集中が続かず、注意がいかずミスがでる「不注意」の症状です。典型的には、「忘れ物が多い」「約束を忘れる」「(時間に注意がいかず)遅刻する」「すぐ気がそれてしまう」などの形で出てきます。

②多動の症状

「抑制」がききにくく、動きすぎてしまうことでの症状です。子供のときは「授業中立ち歩く」「じっとしてられない」形で出ますが、大人だと「頭が忙しい」形、具体的には「いろいろな考え事がやめられない」「しゃべりだすと止まらない」などの形で出る事が多くなります。

③衝動性の症状

「一歩待つ」ことが難しく、感じたことにすぐ反応したり、ついやってしまったりする症状です。「すぐかっとなって手が出る」「思ったことを(場を読まず)つい言ってしまう」などが代表的です。

<ASDの代表的な症状>

①対人面(社会性)の障害

相手の考えを読み取ることが苦手などのことから、対人的なかかわりがうまくいきにくい症状です。「表情の硬さ」「目が合わない」などの形式の問題から、「空気を読まない発言をしてしまう」「思いやりのない(とみられる)行動をしてしまう」など、実際の交流での問題まで、幅広い範囲でやりづらさが出てきます。

②こだわりの症状

気持ちの切り替えが難しく、一つのことに「こだわってしまう」症状です。「頑固すぎる」「細かいことにこだわり全体が見えない」ほか、「気持ちの切り替えが難しい」「とっさの対応が苦手」の形で出る事もあります。

<発達障害の診断>

ASD、ADHDとも、「幼少期と今の症状」「面接での言動の観察」の組み合わせで行います。ただし、症状の自己申告は偏ってしまうことも少なくないため、客観的な視点として「心理検査」を行うこと、体の原因を除外するための「血液検査等」を追加して行い、総合的に判断することが、厳密な診断においては望まれます。

<発達障害の治療>

ADHDに関しては、その特性を和らげるくすりがいくつかあり、相性が合えば、その使用で症状が和らぎます。(なくなりはしません)一方ASDでは、そうした薬は今のところありません。また、二次的な不安、うつなどの改善のために、抗うつ薬などを使う場合があります。

  

そのうえで、こだわり・不注意などの「特性」に対しては、「自分で特性を知りつつ、それをカバーする」ことが重要になります。これは習慣づけや体のリハビリに近い面があり、時間をかけてじっくり繰り返していくことが必要になります。

心療内科でできること・難しいこと

診断は可能ですが、特性のフォロー等一部限界があります。

 

発達障害の診断のためには、心療内科(メンタルクリニック)で診察等を受けることが必要です。また、ADHDの症状の改善など、治療で改善できる部分も多くあります。ただし、幼少期で発達障害の診断を受けた方が「療育(年単位での特性改善などの関わり)」やそれに近いことを心療内科で受けることは、現実的に困難です。

 

ここで、具体的に、心療内科(メンタルクリニック)でできること、難しいことを見ていきます。

 

<できること>

 

①精神科的な診断の確定

心理検査のみで診断はできず、診断のためには、医師の診察が必要です。また、診察の中で、「からだの原因の除外」「二次障害(不安、うつ等)の有無の判断」なども、同時に行うことができます。

 

②取り組みの方向性の助言

精神科的な診断・合併している二次障害の診断をもとに、どのような方向で取り組んでいくべきか、および薬を使うかどうかなど、大局的な取り組みの方向性について、医学的な妥当性、専門性が担保された中で助言を受けることができます。

 

③必要な薬での治療

ADHDの症状改善のためのくすり、二次障害改善のためのくすりなどを相談しつつ使用し、特性・症状の改善を図っていくことができます。

 

<難しいこと>

 

①「発達障害」の根本治療(特にASD)

使う薬は、あくまで「症状の緩和」のためであり、「根本治療」ではなく、特性自体は持続します。特にASDに関しては、二次障害に対して以外の薬はなく、薬での改善には限界があります。

 

②時間をかけた発達特性への取り組み

心療内科では、一般的には「診察」「くすりの治療」が柱になり、いわゆる「じっくり時間をかけた特性改善等への取組み」は現実的には困難です。

診断後の取り組みの3つの枠組み

自分での取り組みの他、就労支援施設、カウンセリングが選択肢です。

大人の発達障害の方だと、子供のように「療育」をしっかり受けることは難しく、また心療内科でもそれは難しい面があります。

 

では、時間をかけた「特性等への取り組み」は、どのように行えばいいでしょうか?3つ、候補になる枠組みがあります。

 

①自分で取り組む(自習)

 

子どもと違い、成人では「自分で考えて取り組む」ことが行いやすいと言えます。また、最近では、発達障害を知る・改善に取り組むための情報も、多く集めることが可能になっています。そのため、まず自分で発達障害の特性を知り、その対策を試行錯誤しながら繰り返していくことが、取り組みの土台になります。

 

ただし、自分だけでは見方が偏ってしまったり、問題自体が見えにくいなど、時に難しい面が多いのも確かです。

 

②就労支援施設の活用

 

自分での取り組みに限界があり、かつ十分な時間が確保できる場合は、いわゆる「就労支援施設」の活用が選択肢になります。これは、週3-5回、1-2年を目安に定期的に通い、様々なリハビリを行うものです。ここ最近では、発達障害に特化した施設も増えています。

 

そこでは時間をじっくりかけて、子供の「療育」に近い形で、集中的なトレーニングを受けることが可能です。ただし、かなりの期間を要し、かつ基本的には集団となり個別対策には限界があるのが弱点です。

 

③カウンセリングでのフォロー

 

自分だけでは難しく、かつ「就労支援施設」に通う期間は確保しにくい場合、「カウンセリング」でのフォローが選択肢になります。

 

基本的には自分で改善の取り組みは続けつつ、カウンセリングで振り返りや改善のプランを練っていくことを組み合わせていき、方向性を間違わず取り組みを継続し、徐々に改善を図ることを目標とします。

 

カウンセリングでの発達障害への取り組み

特性の改善・生活力の向上に、助言を受けつつ取り組みます。

 

発達障害は特性のため、従来型の「話して整理する」タイプのカウンセリングはあまり相性が良くないとされます。一方で、(認知行動療法に近い形での)特性改善・生活力向上のための援助が、発達障害へのカウンセリングとして有効性が期待できます。具体的には、おもに次の3つに取り組みます。

 

①特性改善のための取り組み

 

たとえばこだわりには「別の見方を探す練習(認知再構成)」、衝動性には「一歩引いて冷静になる(マインドフルネス等)」など、有効とされる取り組みがあります。ただしすぐには身につかず、状態を見極めつつの長期間の反復練習が必要です。

 

カウンセリングでは会話を通じて、まず自分の特性を知り、特性への対策(練習)を計画します。そして次の回までに練習し、その後次の回のカウンセリングで練習の振り返りとその上での次の練習を計画、練習と振り返り・修正を繰り返していき、徐々に特性改善するよう反復練習します。

 

②生活技能(ライフスキル)獲得への取り組み

 

発達障害があると、対人関係や日常の生活技能にアンバランスがあり、それで生活が難しくなったり、ストレスが増えることも少なくありません。カウンセリングでは対話を通じて、苦手な生活技能(ライフスキル)を見極め、その改善の対策(練習)を計画、合間に練習し、振り返り・修正を繰り返していき、徐々に苦手な技能を獲得することを目指します。

 

③二次障害改善への取り組み

 

中には、嫌な体験等を背景に、慢性的な落ち込みや対人不安などの「二次障害」を合併し、生活に強く影響することがあります。カウンセリングでは会話を通じて合併している二次障害の有無とその影響を見極め、影響が強い場合は、不安への脱感作など、改善のための取り組みを計画・反復練習するなどして実践していきます。

まとめ

カウンセリングしつつ徐々に改善に取り組む選択肢があります。

 

特に大人の発達障害では、診断後の改善の取り組みは自分自身にゆだねられる部分が大きくなります。その中で、カウンセリングを「コーチング」的に用いつつ改善の練習に取り組むことが、改善のための選択肢になると思われます。

 

なお、当ルームでも、発達障害の方の特性改善等のためのカウンセリングをお受けしています。また、必要に応じ、治療ができる医療機関と連携しています。もしお悩みがある場合、下のボタンからすぐ予約を取ることができます。お待ちしております。

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監修者:春日 雄一郎(精神科医、臨床心理士、医療法人社団Heart Station 理事長)